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登録日:2010/04/02(金) 23 29 58 更新日:2022/02/01 Tue 18 17 30NEW! 所要時間:約 4 分で読めます ▽タグ一覧 リュウタ 国木田 宣教師 宣教師国木田 松元恵 涼宮ハルヒの憂鬱 男の娘 空気 谷口のオマケ←むしろ谷口がオマケ 驚愕で彼は頑張りました 高校生 『涼宮ハルヒシリーズ』に登場するキャラクターの一人でキョンやハルヒ、谷口のクラスメート。 CV 松元恵 出典:涼宮ハルヒの追想、ガイズウェア、バンダイナムコゲームス、2011年5月12日、(C)2009 Nagaru Tanigawa・Noizi Ito/SOS団 (C)2011 NBGI 名前は名字の「国木田」以外は明かされていない。 身長166cm。 学業は優秀らしく、得意教科は英語・数学・古典・科学・物理。 ちなみに苦手教科は生物・日本史・公民。 『涼宮ハルヒの消失』では風邪で休んだ谷口に水酸化ナトリウムのmol計算などを教えていた。 『分裂』では佐々木を模試での仮想ライバルとしていると語った。 SOS団にはやや協力的で、誘われればホイホイついて来る。 谷口は口では嫌がっているがやはりホイホイついて来る。 当然二人とも利用される身であるわけだが……。 だが彼の活躍の出番はほとんどない。 その上特徴的な名言も皆無に等しいし登場してくる大半は谷口と一緒である。 しかも谷口と違い見せ場も無ければ印象に残る台詞も無い。 さらに谷口や出番の少ない喜緑さんでさえキャラソンを持っているのに彼は持っていない。 ■涼宮ハルヒの約束 登場するが、谷口同様たいした出番は……。 ■涼宮ハルヒの戸惑 ゲーム作りの手伝いをしに出ては来るが、そんなに出番は……。 借りてたカメラを返しに部室に訪れたところ、ハルヒとキョンが絡んでいる写真を撮ることに成功した。 『SOS団がおくる最高にして至高のラブストーリー』でも攻略できない。谷口は攻略できるというのに……。 ■涼宮ハルヒの並列 ハルヒに誘われて豪華客船に。谷口は『ほのかな恋の物語』で美味しい所があったが国木田は……。 しかし国木田は谷口とセットで扱われることを悩んでいるようだ。 鶴屋さんが花婿を探した時も反応せず予選で落ちたり、キョンが婚約者になっても嫉妬したりしなかった。 ……まぁ、驚愕以前だったからだが。 ■涼宮ハルヒの追想 出典:涼宮ハルヒの追想、ガイズウェア、バンダイナムコゲームス、2011年5月12日、(C)2009 Nagaru Tanigawa・Noizi Ito/SOS団 (C)2011 NBGI 今作ではサブキャラにも何らかの活躍が用意されているので国木田も見せ場がある。 『麗男コンテスト』にコスプレして出場て『同性への告白演技』をしたり、 1年5組の一員として『知ったかぶりハムレット』に出演したり、写真を撮ってあげたりと活躍する。 ただ立ち絵が特徴的なポーズをしているため、宣教師国木田とプレイヤーから呼ばれることも。 ■涼宮ハルヒちゃんの憂鬱 影の薄さを指摘されている……。 哀れ……。 更にアニメ版ではセリフのほとんどをキョンに奪われ、一言のみになってしまった。 そんな彼だが、5巻では女装キャラという新たな個性を身につけた。意外と可愛い。 そして6巻では結構出番が多かった物の、8巻で佐々木団が登場してからはまた影が薄くなっている。 二次創作ではその容姿からショタキャラとしてキョンや谷口との絡み(アッー!的な意味で)が書かれるが、 キョンと古泉の絡みの方が主流(?)なのかあまり見かけない。 しかし、サブキャラとしてSS(主に佐々キョン)に出演すると覚醒。 佐々木とキョンの橋渡しをしたり、ナイスアシストしたり、黒木田だったり、橘の機関に所属していたりする。 実は女の子。 という設定な事もある。 以下『驚愕』でのネタバレ 成績的にもっと優秀な高校に行けたはずの彼が北高に入学したのは鶴屋さんに近づきたかったから。 どういう経緯で彼女を知ってそういう気持ちを抱いたかは不明。 国木田「僕の出番を増やす為にも修正をよろしくお願いするよ」 キョン&谷口「無理だな」 国木田「そんなこと無いよ~」 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 国木田の恋愛事情には、うん、驚愕したわ -- 名無しさん (2014-01-27 04 48 07) そのあたりは驚愕で聞くから -- 名無しさん (2014-05-24 15 54 43) ハルヒちゃんのアニメで「がんばれー」しか台詞なかったのは吹いたw -- 名無しさん (2015-09-18 11 07 31) 毛がないのソースはどこですか?! -- 名無しさん (2020-12-06 00 40 21) 名前 コメント
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声のした方に顔を向ける。 「古泉か。……ここは?」 「病院です。冬の時と同じ部屋ですよ」 古泉の話を聞くと、どうやら前回と同じように、俺は倒れて病院に運ばれたということになっているようだ。 「今はいつだ?俺はどのくらい眠ってたんだ?」 「今が夕方ですから、ほぼ丸一日といったところですね」 「今日の部活は?」 「もちろん中止ですよ」 そう言って古泉は右手を大きく動かす。 『涼宮ハルヒの交流』 ―第六章― その先には俺の看病をしてくれて疲れているのか、眠っているハルヒの姿が見える。 「ちなみに涼宮さんは今日は学校にも来ていません」 じゃあハルヒはずっとここにいてくれたってことなのか? 「そういうことになりますね。かなり心配していたようですよ。ところで……」 古泉はほんの少しばかり真剣な顔つきになる。 「今回は一体何が起こったのでしょうか?」 ということは古泉は何もわかってないのか? 「昨日の昼間にかなり大きめの閉鎖空間が発生しましてね。あるいはそれが関係しているのかと」 ああ、やっぱ閉鎖空間はできてたか。 「その顔は、心当たりがおありで?」 「少しな。たぶん原因は俺のせいだ」 「と、言いますと?」 「ああ、昨日の昼にな……と、その前にこの一日に何が起こったかを話しておこうと思うんだが」 「構いません。どうぞ」 古泉はそう言って手で続きを促す。 「実はな、異世界に行ってたのさ」 ……………… ………… …… この一日について、一部省略しつつも大まかに全てを伝える。 「と、まぁこんな感じだ」 「そんなことが……」 古泉は予想以上に驚いているようだが、そんなに驚くことか? 「いえ、異世界人を呼ぶことが出来るとは思っていませんでしたから」 「そういえば向こうのお前も同じようなこと言ってたな。異世界に干渉するのは難しいとかなんとか そっちの世界にも神がいる可能性がいるから、ハルヒでもそう簡単にはいかないとか」 「ええ、そんなところです。ですから、この世界からあなたをどうすれば連れて行けるのかがわかりません。 例え向こうの涼宮さんがそう望んだとしても、おそらくこちらの涼宮さんが妨害すると思われますし」 そういえば言うの忘れてたな。 「向こうのハルヒの話だと、俺が異世界に行ったのは、向こうのハルヒの力じゃないらしいぜ」 「向こうの涼宮さんには力の自覚があるのですか!?そんな……」 「まぁでも特に問題はなさそうだったぜ。知ってるって言ってもなんとなく程度みたいだったし」 「そうですか……。それは非常に興味深いことですね。 だからといってこちらの涼宮さんに力の事を教えても問題ないと考えるのは早計ですけど」 確かに。向こうのハルヒとこっちのハルヒにはかなり違いがあるようだったしな。 「それにしても、ではどうしてあなたは向こうの世界に行ったのでしょうね。 やはり昼間の閉鎖空間が関係して……!なるほど、そういうことですか」 わかったのか?なるほどって言われても全くわからんぞ。 「昨日の昼に何が起こったか教えていただけますか?」 正直言うとあんまり話したくないことなんだが、言わないと話が進まないよな。 「昨日の昼休みに弁当を食べた後、いつものように谷口、国木田と話をしていたわけだ。 で、これもいつものことだが、谷口が彼女がどうとか話始めたときにハルヒが帰ってきた。 まぁその時は別にどうともなかったんだが、時間が経って二人が去った後にハルヒが聞いてきたんだ。 『あんたも彼女欲しいの』って。俺は欲しくないことはない、みたいな感じで返したと思うが」 「なるほど、やはりそういう話ですか」 やはりって何だ?やはりって。気にくわんな。 「で、俺もハルヒにお前こそどうなんだ、って聞いたらいつもどおり『普通の人間には興味ないのよ』ってさ。 そのハルヒの様子が気に入らなかったのかなんでだかは知らないが、つい熱くなっちまって、 普通じゃない人間なんか見つかりっこないんだから、普通の人間で満足するしかないんだよ、って、 ちょっとばかり声を荒げちまったのさ。そうしたら『うっさい、だまれ!』って怒鳴られた。 たぶんかなり怒ってるんだろうが、それ以降は全く口をきいてくれなかった」 古泉はクックッ、と変な笑い方をして言う。 その笑い方はやめろ。気色が悪い。 「それはあなたが悪いですね」 「そうだな。そんなムキになるところじゃないよな」「いえいえ、違いますよ。あなたが素直じゃないのがいけないのですよ」 そう言ってまた笑う。 何を言ってるんだこいつは?全くわからんぞ。 「まぁそれでも結構ですよ。とりあえず何が起こったかについてはおおよそ見当がつきました」 まじでか?じゃあ、どうして俺は異世界に? 「結論から言いますと、あなたはこちらの涼宮さんによって異世界に飛ばされたのですよ」 飛ばされた?そんなことができるのか? 「異世界から連れてくるよりは、異世界に飛ばす方が簡単だということはなんとなくイメージできるかと」 まぁ確かにそう言われてみれば、ポンっと飛ばすだけならそう難しくはないような気はするな。 「ということは、ハルヒが怒って俺に愛想をつかしちまってことだな」 「いいえ、違います。むしろ逆です」 またこいつはおかしなことを言い出した。逆ならなんで飛ばされる必要があるんだ。 「では簡潔に聞きますが、あなたは涼宮さんのことが好きですね?」 「………」 「ふふっ、あなたの態度は口と違っていつ見ても素直ですね。で、涼宮さんもそれをある程度は感じています。 まぁ涼宮さんは恋愛感情などに疎い方ですから、確信があるというほどではないでしょうね」 「その話が何の関係があるんだ?」 俺の質問を聞いているのかいないのか、古泉は変わらない調子だ。 「先ほどあなたは涼宮さんが『普通の人間には興味ない』と言ったと言いましたが、それは嘘です。 彼女は普通の人間にも興味を持っています。いえ、持てるようになったというべきですか。あなたのおかげで。 ですが、彼女も頑固な人です。『普通の人間でもいい』と簡単には言えないのですよ。 つまり、彼女もその頑固さ、意地ですかね。それと感情のジレンマに悩まされているというわけです」 「話が全く見えてこないが、どちらにしろハルヒは俺にいなくなって欲しいと思ったんじゃないのか?」 「ですから、その全く逆です。彼女はあなたにずっと側にいて欲しいと願っています」 「ずっと側にいて欲しい人間を異世界に飛ばす人間の気持ちが俺には全く理解できないんだが?」 やれやれ、と言って古泉は大きく息をつく。 くそっ、なんかムカつくな。 「これは例え話ですが、涼宮さんがあなたのことを好きになってしまったとします。涼宮さんはその気持ちを伝えたい。 ですが、普通の人間であるあなたにたいしてそのような感情を抱くことは自分の主義に反することになる。 いえ、この場合は主義というよりも思想ですかね。それは涼宮さんのアイデンティティーとも言えます。 それを覆すということは、自分自身の否定に他ならない。だからこそその感情を認めるわけにはいかない。 ですが、そうは言ってもあなたには側にいて欲しい。それは事実です。ならばどうすればよいでしょうか」 知らん。どうにもならないんじゃないのか? 「いいえ、答えは簡単です。あなたを普通の人間じゃなくしてしまえばいいのですよ」 こいつはまたとんでもないことを言い出した。 「そんな無茶な。じゃあ俺に変な力が生まれたとか言うんじゃないだろうな?」 「いえ、おそらく涼宮さんはあなたに特殊な能力を持たせることは望んでいません。 なぜなら、涼宮さんが好きになったのはあくまで何の力も持たない普通の人間のあなたなのですから。 自分への言い訳のために、申し訳程度にあなたに特殊な属性を付加したにすぎません。 それが、異世界人という属性です」 「いや、異世界人と言っても俺はこの世界の人間だぜ?」 「ご心配なく。涼宮さんはあまり通常の設定をしないようなので。例えば僕の力もそうです。 涼宮さんは超能力者を望みましたが、僕の力は一般人が想像する超能力とはかけ離れています。 長門さんにしてもそうです。彼女も、UFOでやってくるようなごく一般的な宇宙人ではありません。 それに比べれば、あなたはまだ普通の異世界人とも言えると思いますが」 そう言われてみれば変だな。ハルヒは普通の超能力者すら嫌なのか?わけわからん。 長門に至っては本当にわけのわからん存在だしな。朝比奈さんにも何かあるのか? 「言うなれば、あなたは他所に行ってしまった転校生が、再び転校して戻ってきたようなものです。 まぁどちらにしろ転校生というわけですね」 古泉はわかりやすいのかわかりづらいのかよくわからん微妙な例えを出してきた。 「つまりハルヒは俺を異世界人にするためだけに、俺を異世界に飛ばしたって言うのか?」 「おそらくはそうです。その証拠にちゃんとここに呼び戻されているでしょう?」 行っていたのはたった一日だしな。確かに一試合でも投げれば肩書きは元メジャーリーガーになるもんな。 それにしても……、 「俺が異世界人になるってのはそこまで重要なことなのか?」 「そうですね。かなり重要かと」 そうは思えないんだがな。そんなにこだわることか? 古泉め、また笑ってやがる。くそっ。 「女性にとっては言い訳というものが非常に重要になります。 例えばデートに誘われたからといって、簡単に誘いにのると軽いと思われるのでは、という不安があります。 ですが、相手から何度も誘われることによってその気持ちは少し変わってきます。 『別に私が行きたいわけじゃないが、これだけ熱心なのだから付き合ってあげよう』と。これが言い訳です。 要するにそれと同じことです。『普通の人なら断るんだけど異世界人なら仕方ないよね』というわけです。 涼宮さんは言っていたのでしょう?『普通の人間じゃなければなんでもいい』と。ですから同じことです。 異世界人だからあなたと付き合ってあげる。別にあなたのことを好きになってしまったからではない。というわけです」 何かあまりよくわからんような微妙な話だが、 「まぁいい。とにかくお前の言うことが当たっているならば、俺が再び飛ばされることはないってわけだな?」 「おそらくは。もし何らかの他の意図がある場合にはわかりませんが」 そうか。ってことはこれで一件落着ってことだな。とりあえず安心だ。 「何をおっしゃるんですか。あなたにはまだ重要な仕事が残っているじゃないですか」 重要?仕事?何のことです? 「おや、とぼけるおつもりで?何のためにあなたは異世界まで行ったと思っているのですか?」 ……わかってるよ。 「……ちゃんとやるよ。そのつもりだ。それにその方がお前も助かるんだろ。」 「もちろんそうですが、どちらかというと僕は一人の友人として応援しているのですよ」 はいはい、ありがとよ。「まぁそういうことです。……涼宮さん!起きてください。彼が目を覚ましましたよ」 古泉はハルヒに呼びかけながら肩を揺する。 「……ん、古泉くん……?ってキョン起きたの!?あんたあたしがどれだけ心配したと思ってんのよ。 あ、いや、心配っていってもほら、だ、団長だから団員のこと心配するのは当たり前でしょ」 「……ああ、心配かけてすまん。ありがとよ」 「ま、ちゃんと目を覚ましたならいいわ。見た感じだいじょぶそうだし」 古泉がふと立ち上がりドアの方へ向かう。 「何かお二人に飲み物でも買ってきますね。……では、お願いします」 出ていく前に俺の方を向いて気持ちの悪い笑みを浮かべてきやがった。 そして、ここでハルヒと二人きりになった。 ◇◇◇◇◇ 最終章へ
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◆0 夢と希望に充ちあふれて始まったような気がしないでもない高校生活一か月目にして涼宮ハルヒと関わりを持ってしまってからというもの俺の人生はちょっとしたスペクタクルとでも言うべき出来事の連続ではあるが、しかし上には上が下には下がいる、と昔から言うように俺以上に意味のわからない存在に振り回されて恐ろしく充実した人生を送っているやつというのも世の中には確かに存在する。 今回はハルヒと俺と、そんな一人の男子生徒にまつわる、不幸とも幸福ともいえないような騒動の話だ。 ……え? 誰だ、だって? やれやれ、言わなくてもわかるだろう。 いつだって騒動のきっかけはハルヒであり、そしてハルヒに巻き込まれた俺以外の男子といえば、あいつしかいないじゃないか。いや、谷口ではない――古泉一樹。赤玉変態型超能力者、である。 ◆1 「キョンくん、ちょっとお願いされてほしいことがあるのね」 と、同じクラスの阪中が話しかけてきたのは、長い一日の授業が終わってさて団活へと赴くかなと俺が座りすぎで重たくなった腰を上げたころだった。ちなみにハルヒはホームルームが済んだ瞬間ロケットスタートでぶっ飛んでいってしまったので、後ろの席は空っぽである。 「ん、なんだ? ハルヒへの言付けとかだったら頼むから本人を探してくれ」 探すまでもなく部室にいると思うが、それはさておき、最近のハルヒはクラスの女子とよく話をしているようだし、出来ればこのまま普通にクラスに馴染んで普通の女子高生になってほしい……と俺は思うのだ。って、俺に何の権限があってあいつにそんなことを望むのか、という話だが。 「違うのね」 阪中はそう否定するとなんだか恥ずかしそうにもじもじと身をよじり、上目遣いで俺を見上げた。 なんだよ可愛いな~さすが某国木田の一押し……すまん、妄言だ。 「えっと、用があるのは涼宮さんじゃないのね……」 ごそごそとどこからともなくファンシーな色のものを取り出し、阪中は頬をさくらんぼ色に染めながら、 「これ……」 おいおい、マジか! 「えらくマジなのね! これ、古泉さんに渡してください!」 お願いなのねー(のねー)! とエコーを響かせつつ阪中はどこへともなく走っていき、俺の手の中にはご丁寧に赤いハートのシールが貼られた、どっから見てもラブレター然としたものが残された。 ……はは、お約束だな。 「――ちょっとキョン、今阪中さんに何かもらってなかったかい?」 「いやもらってたよな、それは俺が見るところずばりラブレターだろう!」 ……うるせー。 阪中の声の残響が消えたとたんに話しかけてきた国木田と谷口。お前ら目がギラギラしてるんだが。ああもらったとも、見ろ、この可愛い丸文字で書かれた宛名を。まだ本邦未公開の俺の名前だぞ。 「フルイズミカズキ……? あれ、お前そんな名前だっけ、忘れちまったよ。どのへんがキョン?」 はい、馬鹿ー。 「なんだ……そうだよね、まさか阪中さんに限ってキョンってことはないよね」 さりげなくものすごく失礼だぞ、国木田。残念ながら反論材料がないが。 「つーかまた古泉かよ。キョンもかわいそうになー、あんなのがそばにいたら余計モテなかろう」 お前今のボケだったのかよ! ボケで終わらせずにノリツッコミにまで昇華させてくれないとさっぱりだ。 「食いつくところそこかよ! 俺のことなんかほっといて話を進めろや!」 「よし。……で、なんだ、古泉は実はそんなにモテモテだったのか」 まああの胡散臭い整形疑惑さえ抱かせる顔だからな、わからないでもないでもない。ああ認めたくない。どうせ俺の知らんところで彼女の一人や二人や三人くらいは作っているのだろう。痴情のもつれから刺されちまえ。 すると谷口国木田両名はいかにもうんざりしましたーと言うように首を振り、 「かぁーっ、キョン、鈍いにもほどがあるぜ。あんなに露骨にモテてる奴があるか、忌々しい」 何? そうなのか? 「そうだよ。SOS団だって朝比奈さんとか、たまに見てもわかるくらいあからさまにアタックかけてるよ」 「そのうえ、それになびかない、と来たもんだ。あいつはホモか? Sランクだぞ?」 待て待て待て待て、待て! 朝比奈さんが、古泉に懸想しているだと? 有り得ない。ハルヒが恋をしたり俺が告白を受けるというくらいありえない。 国木田は哀れむような目つきで俺を見やると、「認めたくないのはわかるけどね……」と言った。 違う。断じてそうじゃない。認知するしないの問題ではないぞ。朝比奈さんが古泉に猛烈アタックって、いったいいつの話だ。映画撮影は随分昔に終わったし結局まだ続編は撮っていない。 「毎日お弁当作って九組にいったり、してるらしいけど」 有り得ない。それを俺が知らないなんていくらなんだって、さすがにおかしいじゃないか。俺の知る限り、未来人の朝比奈さんと超能力者の古泉は実はあまり仲がよくなかったはずじゃないのか? 俺は手にした阪中の手紙を見下ろした。俺の知らないところで、何か異常なことが起きている。 ◆2 古泉か朝比奈さん、あるいは第三者だが長門に話を聞く必要があったのだが――部室まで急行する途中で、俺はハルヒに引き止められた。正確には、部室のドアを目前にした廊下の真ん中で、であるが。 「何してんだ?」 「しっ、静かにしなさい」 ドアに張りついて片耳を押し当てながら、ハルヒはとんとんとドアを指差した。どうやら同じようにしてみろ、という意味のようだ。俺としては急いで三人のうち誰かに会いたいのだが、仕方がない―― 『あっ、朝比奈さん!? 何のおつもりですか!』 聞こえてきたのは、何やら切羽詰まった古泉の声だった。朝比奈さんもいるようだが、穏やかではない。 『うふ、お茶にちょっと仕込んじゃいました。古泉くんちっとも振り向いてくれないんだもの。流行りのヤンデレってやつですよ~』 『いや、僕はヤンデレとかキョンデレとか、そういうツンデレに似てるものはもううんざり……ではなくてですねっ』 それですよぅ、と朝比奈さんの可愛らしいはずの声。 『古泉くん、嫌じゃないんですか? あたしは嫌です、こんなに魅力的なのに、立場に縛られて独り身のままなんて』 『それはっ……あなたには、関係のないことですよ』 『そんなことありません。このまま何もしないで手に入る未来は、孤独なだけ……そんなのは嫌!』 『意味のわからないことを言わないでください! わかってるんですか、ご自分が何をしているのか』 『現場の独断で変革を強行しちゃっても、いいじゃないですかぁっ! 既成事実さえあれば、規定事項が……』 ――待て待て待て、こらハルヒ、目を輝かせてる場合かっ! 「そこの二人、ちょっと待ったぁ!」 「「きゃっ」」 ハルヒが張りついているのも無視して、ドアを蹴開ける。部室内では……朝比奈さんが、ウェイトレス姿だった。 「キョン! 何す……」 「ふぇえっ! ご、ごめんなさぁい」 「あっみくるちゃん! 待ちなさい、どこ行くのっ」 朝比奈さんは本物とは思えない勢いで部室を飛び出して行き、床に転んでいたハルヒはバネのように跳ね起きて朝比奈さんを追いかけてあっという間にいなくなった。 ……古泉、いつまでも床に寝ころんでる場合か。まさか、朝比奈さんに押し倒されたんじゃないだろうな。 「いえ、申し訳ないのですが、彼女にいただいたお茶が妙な味でして」 それはまさかあれか、痺れ薬というやつか! 朝比奈さんはそんなものをいったいどっから持ってきたのやら。 「長門さんに、あなたから頼んでいただきたいのですが」 ああ長門な、長門……ってうおっ! いたのか長門! 「……最初から」 助けてやれよ、もっと早く……いや悪い、今からでも遅くないからここに転がってるのを何とかしてくれ。長門はこくりと頷くと、いつもの本から離した手のひらをこちらへかざした。きゅるる、と呪文。 「……いやあ、あなたが来て下さって助かりましたよ……」 むくりと起き上がって古泉が情けない笑顔を浮かべた。もう少しで貞操を失うところでした、か。古泉、お前も普通に童貞だったのか……で、朝比奈さんか……いや、特に何も考えてないぞ。 「……これ、お前宛てに、阪中から預かってきたんだが」 俺はとりあえず持ったままであった手紙を古泉に突きつけてやった。別に怨念など込めていない。 「阪中さん、というと……」 三月に幽霊騒ぎを持ち込んできたあいつだよ。当然覚えてるよな? 向こうはラブレターまでよこしてるんだ。 「ラブレター」 古泉は溜息をつきつつ立ち上がると、机の上に置いてあった通学鞄の中からごっそり紙の束を取り出した。 「これは全て、本日いただいたものです。大半は朝下駄箱の中に入っていたんですが」 ばらばらと机の上一面に広げられた、手紙と思しきハガキ大のカラフルな物体たちに、阪中の手紙を加えて古泉は再び溜息をついた。谷口あたりが見たら何を贅沢に悩んでいるのかと思いそうだが、 「普段からもらうのか?」 「まさか……今日が初めてですよ。それをこんなに」 なるほど、やはり異常事態である。 「朝比奈さんがお前にお弁当を作ってくるそうだが」 「確かに今日はいらっしゃいましたが、それも今日が初めてです」 しかし国木田の話では、毎日猛烈なアタックということだったのだが……いったい何がこんなことに。 助けて長門さん。俺と古泉は揃って読書中の長門に目線をやった。長門は俺にまっすぐ顔を向け、 「朝比奈みくるがここへ戻るまであと五分三十二秒。退避を推奨」 俺がか。 「……違う。古泉一樹が」 だと思ったよ。 ◆3 「で、長門、説明してくれるか?」 校内のどこかで待機している、と言う古泉を早急に追い払い、俺は長門に向き直った。もう少しで朝比奈さん達が戻ってくると言ったが、どうやら長門は朝比奈さんとは逆に古泉を避けたいようだ。 「……説明する」 ありがとな。古泉には後から伝えられるかね。しかし待機って、いったい学校のどこに隠れるんだろうな。 「……古泉一樹には、現在、情報改変が施されている」 ――― 「情報改変……ですか」 はい、と彼女は微笑み頷いた。 僕が校内でのとりあえずの待機場所に選んだのは、生徒会室だった。ここなら涼宮さんには見つからず、その他の生徒も生徒会長が閉め出しているだろう、との判断であり、それは八割は正解だったのだが、しかし僕がすっかり忘れていたのは……相変わらず、生徒会には僕の計算外の人物がいる、ということであった。 「古泉さんの存在を認識した女性が、古泉さんに好意を持つよう設定されています」 生徒会書記にしてTFEI端末である喜緑江美里さんが、うっとりと僕の手を撫でながら言った。 非常に、なんというか、居心地が悪い。なんでこの人こんなにぴったりくっついて座ってくるんだ! 後頭部にヤンキー上がりのきっつい視線がザクザク刺さってるんですが。痛い痛い痛い。神人のパンチよりはマシながら、何かタバコを押しつけられてるようなジリジリした痛みが……。 「つまり、今なら古泉さんはあらゆる女性を――涼宮ハルヒさんを除きますが――落とし放題というわけです。誰でもおっけーですよ、長門さんでも、あの二人が結婚したらキョンキョンになってしまうお嬢さんでも頭部で昆布を養殖しているような奇怪な生き物でも、我々の認識上は女性ですから。まああのような髪の毛の妖怪を選ぶのはよほどの黒髪フェチさんだけでしょうけれど……ところで古泉さんは、髪の綺麗な女性はお好きですか? わかめは髪の毛に良いんですよ」 知ってますけど、わかめ……ていうか、なぜそのチョイス……すごい敵対心が感じられるんですが。 いや待て、そこじゃない。 「……今、涼宮さんを除く、とおっしゃいましたよね?」 「うーん、江美里とお付き合いしてくれたら、もっといろいろ教えちゃいますよ?」 痛っ! なんかあらゆる空気が痛い! 前門の虎後門の狼! 「……喜緑くん。今日はもう帰りたまえ。会長命令だ」 と、会長が言った。 「会長、それは権力の乱用です。不信任案出しますよ」 「我が生徒会にそのような規定はない。早く帰りたまえ」 そもそも、高校の生徒会長には、役員に命令する権限もないんだけどな……と思ったが、余計なことを言っても自分の首を締めるだけだと知っている賢い僕は黙っておいた。喜緑さんはふうと溜息をつき、 「仕方がありませんね、諦めましょう」 とあっさり手ぶらで部屋を出ていった。仕事とか、してたんじゃないのか……。 「古泉……俺が生徒会室でボヤ騒ぎを起こしたくなる前にそのアホ女の思いつきを解決しろよ……」 了解、しました、が……さて、どうしたら彼が僕の思い通りに動いてくれるだろうか。それと今から、部室に戻っても気まずくないだろうか……。はあ。 ――― で、結局、部室に古泉が戻ってきたころにはハルヒによって活動は解散となっており、朝比奈さんはハルヒに付き添われて先に帰っていた。長門も古泉が来る少し前に帰ってしまい、俺は一人であいつを待つ羽目になっていた、というわけなのだが。 「大体の事情は、ある方がご親切にも教えて下さったのですが……長門さんは、今後について何か言ってませんか」 なぜか、ご親切にも、を強調する古泉。よっぽど親切な人にあったのだろうか。事情を知ってる人って誰だ? 「長門は、こんなことが起こるに至った理由がわからなければ解決不可能だと言っていたが」 あいにく、長門にわからないことは俺にもわかりそうもない。何せハルヒの考えを当てようなんてな。 すると古泉は、ふっと呆れとウンザリが八割くらいのこちらが見ていてムカつく笑みを浮かべた。 「あなた方にもこれくらいはわかっていただけるかと期待していたのですが……相変わらず疎いんですね」 馬鹿にしてんのか。そうなんだな? 帰っていいか。 「聞いてください。僕が会う女子生徒すべてにアプローチを受けているのは涼宮さんが望んだからです。しかし涼宮さんは僕のためを思ってハーレムにしてくれようとしたわけではない。これはいいですね?」 そうだな、まあそうだろう。あのハルヒが他人中心の世界を作ろうと思うはずがない。 「では、何のために涼宮さんは世界を改変したのか――答えは簡単、要はあなたのためなのです」 俺かよ。お前は毎回毎回俺に責任をとらせて楽しいのか! 今回ばかりはさすがに心当たりがまったくないぞ。 「単純な話です……ライバルなんかいなければいい、自分以外が、あなたではない誰かを好きになればいい、と涼宮さんは考えたのでしょうね。あなたでなければ、別に誰でもよかったんじゃないですか」 毎回毎回、だから僕は宝くじが当たらないんですよ、と古泉が呟く。意味不明だ。 「つまり……どういうことだよ」 「心変わりしない、と涼宮さんに誓ってください」 いつ、どこで、なぜ、どうやって。 「明日にでも、ラブレターというのはいかがですか? 幸いここに見本が大量にありますし」 「悪趣味だぞ、古泉」 「失礼……わかっていただけた、ということでよろしいですか?」 いや、正直お前の論理の飛躍にはあまりついていけていない。そもそも俺の心の何がどう変わるのか。 「とにかく、時を見て、行動してください」 と、いつになく真剣な声音で古泉が言った。こいつも追いつめられるとグレる、というわけらしい、が……冗談でもなんでもなく、俺がどう行動したらお前がモテなくなるんだ? 続きはWebで!
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「ねぇ、キョン。駆け落ちしよっか?」 朝っぱらから物思いに耽っていると思ったら・・・何を言い出すんだ、コイツは。 ”駆け落ち”なんていう言葉は、お互いを愛し合っているが結ばれない運命にある二人がその運命を打ち破るためにだな。 「あたしとさ、樹海に行かない?」 しかも、死ぬこと前提でかよ。 頬杖つきながら、ぼーっとした顔で空を眺めんでくれ。 俺はいつも馬鹿みたいにテンション高いお前しか知らんのだ。 そんな違う一面を見せられたら、したくなくても『なぜか』動揺してしまう。 「ねぇ、聞いてるの?」 頬杖を止めてこちらを向いたハルヒの眉がキリキリと上がる。 これでこそ、俺の知っているハルヒだ。 論理的な思考型な俺は、理由を聞いてから何事にも答えるようにしているが、 ハルヒは突飛なことを言う割りにその理由を聞かれると不機嫌になるし、答えようとはしない。 『駆け落ちしよっか?』って言った理由をハルヒに聞くのはナンセンスだ。 …だが、聞いてしまう。 だって、それが俺の思考パターンだからだ。 「聞いてたけど、どうしてまた駆け落ちなんだ?・・・その前にどうして俺なんだ?」 こいつはいつも主語と述語が抜ける。そして、その経緯、説明もない。 まるで”私の思考はアンタには伝わってるから、説明しなくてもいいのよ”みたいな。 あいにく俺は、古泉みたいに超能力者でもないから相手の思考を読み取ったりできない。 …ってアイツは閉鎖空間の中でしか能力使えなかったか。 例えにもならないとは、本当に使えない奴だ。 「キョンなら、着いてきてくれると思ったの!」 恥ずかしそうに目線を外す・・・普通の女の子っぽい仕草も出来たんだな。 って、どうして俺なら着いてきてくれるなんて思ったんだ? 俺の思考を読み取ったかのようにハルヒが続けて口を開いた。 「だって、アタシのいう事素直に聞いてくれるんだもん。だから」 ちょっと待て。この際、俺の長所・性格・人物像は関係なしかよ。 どうみても、ハルヒの主観イメージだけじゃねぇか・・・ しかし、俺が安易に否定すればハルヒはまた不機嫌になるだろう。 古泉・長門・朝比奈さん(大)は口を揃えて、その事を忠告したけど、俺には関係ないし、 どうするかはハルヒ次第なのだから・・・ごく平凡一般の俺がとやかく言っても仕方がない。 まぁ、古泉の言っていたハルヒの言葉をできるだけ尊重するようにしてやんわりと話を流してみるか。 「お前がどうして『駆け落ち』だとか、『樹海に行きたい』とか言ったか分からんが、そんな事しなくても俺は3年間お前にこきつかわれる運命だ」 「いつ、何処で、何時、何分、何秒にアタシがアンタをコキ使いたいって言ったのよ!」 「お前の俺への態度を見たら、誰が見ても奴隷とご主人様みたいな関係に見えるぜ?」 ハルヒが何か言おうとしたので、トドメの一撃を刺しておこうと思う。 「でも、別にお前に使われるのは嫌いじゃない」 ちょっとでも、恥ずかしい台詞を言われるとあたふたして、柄にもなく論理的に否定したり、話変えたりするから この戦法はかなり有効なのだ。・・・しかも、実証済み。 すると、暫くハルヒは何か考え込んだ後、パチンと手を合わせて、俺を指差した。 「決めたっ!アタシに使われるのが好きなら、高校3年間と言わずその後も使ってあげるわ」 「・・・なーんて、事があったんだよ」 部室にて、古泉と将棋を指しながら今日の昼休みにあった事を話した。 …というか、どうしてコイツは手数掛かるのに穴熊作ろうとしてんだ?その間に攻め込まれたら終わりなのに。 「キョン君はまた仕出かしましたね」 なんて、真剣な台詞をにこやかに言う古泉。 続けて「僕のバイトもずっと続きそうですねぇ」なんて言いながら、ため息つきやがって。 「どういうことだよ?俺がなんかやったか?」 俺が質問を投げかけると、古泉は鼻の頭を撫でながらこう言った。 「涼宮さんは新たに思い込んでしまいました・・・いや、決意したと言ったところでしょう。彼女は言ったのでしょう? 『高校3年間と言わずその後も使ってあげるわ』と。その意味は分かりますか?その後とは彼女にとってどれぐらいの期間なんでしょうねぇ。 その言葉を推理して、最も現実的で実現可能な事となると・・・」 「なんだよ」 「キョン君。結婚式には呼んでくださいね。・・・あと、あなたは主夫に向いてますよ」 古泉がまたアホな事を言い出した。 こいつは、推理してるとき自分に酔っているんじゃないかと思うことがある。 推理に気を取られて、将棋がおざなりになっているのはコイツらしい。 「王手・・・はい、どうやっても詰みな。しかし、お前の例えはよく分からん」 「はは、負けちゃいましたね」 自分が負けたのにニコニコとしているのもコイツらしい。 さて、と。ハルヒが朝比奈さんの写真撮影を終えて帰ってくる前に、このフラッシュメモリにmikuruフォルダを移動させておくか。 将棋の片付けをしている古泉がポツリとこう言った。 「あなたは、涼宮さんにプロポーズしてOKされたんですよ。順序から言うと、涼宮さんがプロポーズして、あなたがOKしたというか」 なんて言いながら、クスクス笑う古泉。 今のお前相当キモイ悪いぞ。 fin
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今俺はハルヒを膝枕している。なんでかって?そりゃあ子供の我侭を 聞けないようじゃ大人とはいえないだろう?まあ俺はまだ自分を大人だとは 思っていないし、周りもそうは思っていないだろう。ただ、3歳児から見れば 俺だって十分すぎるほど大人なのさ。ああ、説明が足りなすぎるか。つまり こういうことだ。 ハルヒは3歳児になっていた。 ことの発端は10時間程前のことだ。休日の朝8時と言えば大半の人間が 「いつ起きてもいい」という人生でもトップクラスであろう幸せを感じつつ睡眠 という行為に励んでいると思う。俺ももちろんそうである。しかし、俺の幸せは 一人の女によってアインシュタインが四則演算を解くことよりもあっさりと瓦解 された。携帯電話がけたたましい音をあげる。携帯よ、今は朝なんだ。頼むから もう少し静かにしてくれ、という俺の願いは不幸にも全く叶えられることはなく、 俺は諦めて携帯に手を伸ばした。溜息をつきながら液晶を見ると思ってたとお りの名前がそこに映し出されていた。言うまでもなくハルヒである。 「キョン!出るのが遅いわよ!」 さすがハルヒだ。休日の朝だというのにこのテンションである。しかも怒っている。 「ああ、すまない。寝てたんだ」 謝る必要性は全くないが、一応謝っておく。こうした方がこいつも大人しくなるだろう。 俺も大人になったもんだ、などと考えているとハルヒが言葉を続けていた。 「まあいいわ、それよりキョン。今日寒いと思わない?」 比較的早く怒りがおさまった--もともと怒ってなどいなかったのかもしれないが--ハルヒが そんなことを言う。 「ああ、そりゃもう12月だからな」 寒くもなるってもんさ。と言ってからもう12月なのかと考える。あと4ヶ月で朝比奈さんが 卒業か・・・あの天使に会えなくなると思うと心を通り越して心臓が直接張り裂けそうだ。 ていうか先月の初めもこんなこと考えてたよな。いや、先々月も考えていた気がする。 「・・・ということで、皆でコタツを買うことになったから・・って聞いてんの!キョン!」 ああ、まずい聞いてなかった。また怒っていらっしゃる。ここは適当に流しておいた方がいいだろう。 「いや、ちゃんと聞いてたぞ。皆でコタツを買いに行くんだろ?で?それをどこに置くんだ?」 「だから有希の家に持ってって皆でぬくぬくするって言ったじゃない。やっぱり聞いてなかったようね。 団員としての自覚が足りないわよ。キョン」 いや、もう十分すぎるくらい自覚はあるわけなんだが・・・。まあハルヒから見ればまだまだ足りないの だろう。そんなことより、今回のハルヒの提案が大して迷惑なものではなかったことに俺は安心して いた。皆でコタツを買って長門の家で暖まろうというだけである。素敵とも思える提案だ。 「すまん。これから精進する。で?何時集合だ?」 「駅前に9時よ。即行で準備しなさい。じゃあね」 と言いこちらの返事も待たずにハルヒは電話を切った。相変わらずである。結局行くんだけどな。 俺に選択肢なんて始めからないのだ。 集合場所に着くと俺以外の面々は当然のように揃っていた。やれやれ、休日だというのに ご苦労なこった。 「おはようございます。キョン君」 おはようございます。朝比奈さん。相変わらず反則的に可愛らしいですね。あなたに会えた だけでも今日ここに来た意味があるというものです。などと俺が至福を味わっていると、 「遅いわよキョン!罰として買ったコタツはあんたが運びなさい!」 俺に指をさしながらそう言うと、ハルヒは近くの電気店の方にスタスタと歩き始めた。ハルヒよ、 お前は遅れなくてもどうせ俺に運ばせる気だったろうが。 「僕も手伝いますよ」 と、いつのまにか隣に来ていた古泉が相変わらずのさわやかな笑顔で話しかけてくる。 「ああ、すまんがそうしてもらえると助かる」 いえいえ、と言う古泉に、 「そういや最近閉鎖空間はどうなってんだ?」 ふと思ったことを聞いてみる。 「閉鎖空間ですか?全くと言っていいほど現れていませんよ。一番近いので3ヶ月前です。 これは今までの最長記録です」 なるほど、あいつもかなり落ち着いてきたんだな。3ヶ月前は何で発生したんだ?何かあった のか? 「いえ、時間帯的に単なる悪夢でしょう。ふふ・・・心配ですか?涼宮さんが」 ニヤニヤしながらこちらを見る。うるせえな、ただ気になっただけだ。そんなくだらない嘘をついた 小学生を見るような目でこっちを見るな。 「やれやれ、あなたもそろそろ素直になった方がいいですよ?」 うるせえよ。そんなことより、 「長門」 俺に呼ばれて長門はいつもの無表情をこちらに向けた。 「お前コタツなんか部屋にあったら邪魔なんじゃねえのか?なんなら俺が持って帰ろうか?」 俺も部屋にコタツなんてあったら邪魔で仕方ないが、長門にだけ迷惑をかけるわけにも いかんだろう。 「・・・大丈夫」 そこで一拍置き、 「どうにでもなる」 と、長門は続けた。そうか、まあ長門のことだ。使わないときはコタツをコンパクトにするだとか、 そういう反則的なことも出来るのだろう。だったら、長門のマンションに置いておいた方がよさそうだ。 「そうか、悪いな」 「・・・いい」 そんなことを話しているうちに俺たちは電気店に着いていた。ハルヒにいたってはもう中に入って いるようで、入り口からでは姿が見えない。 「どうする?探すか?」 「いえ、その必要はないでしょう。なぜなら・・・」 「みんなー!集合よ!いいのを見つけたわ!」 見ればハルヒが電気家具売り場の方からこちらを呼んでいる。 「なるほどね」 「そういうことです」 結果的に言えば、ハルヒの選んだそれは当たりだった。値段の割にはデザインも可愛らしいし --朝比奈さんも満足気だったしな--、大きさも5人が入っても問題のなさそうなものだ った。もともとハルヒは物を選ぶセンスなどは抜群なのだ。 問題はこれを俺と古泉だけでどう運ぶのかということだったが、これは長門の力によって あっさりと解決された。長門が買ったコタツに目を向けながらなにやらぼそぼそと言うと コタツの重みが一切なくなったのである。このような光景--というか、現象というか--を 見ると、俺の周りは非現実的なもんで溢れかえっているんだなと改めて実感する。いや、 もちろんそれが嫌ってわけじゃない。むしろ楽しいと思っているほどだ。 さて、こうなってしまうと朝比奈さんでも片手で運べてしまうのだが、ハルヒの手前まさかそんな ことをするわけにもいかず、俺と古泉はわざわざ「重いものを持っています」といった表情で コタツを運ぶことになった。途中何度か、 「大丈夫?あたしも手伝ってあげようか?」 などと普段見せない優しさを見せんでもいい時に見せるハルヒの提案を、俺と古泉が笑顔で かわすという行為を繰り返しているうちに俺たちは長門のマンションに到着した。 「さあキョン!組み立てなさい!」 「へいへい」 と溜息をつきながら俺はダンボールを開け始めた。こんな扱いを受けているというのに なんでだろうね?全くいらつかないのだ。これが慣れというやつだろうか。だとしたら、 この習性は治したほうがいいのではないだろうか。などと思案している間に古泉の 手伝いもあってか、あっさりとコタツは完成した。まあ、元々組み立てるのが難しいもの でもないしな。 「よし!じゃあ有希!あれ出して」 「わかった」 と、言いながら長門は台所に向かってスタスタと歩いていった。そして数十秒で戻ってくる。 両手には大量のみかんとスナックが抱えられていた。 「おいおい、随分準備がいいな」 「まあね皆には昨日のうちに言っておいたから」 だったら俺にも言っといてくれ。その方が心の準備が出来るってもんだ。 「だって、あんたどうせ暇でしょ?だったら当日に言えば済む話じゃない」 クソ、反論できないのが歯がゆい。ハルヒの言うとおり俺の休日にSOS団がらみ以外 の予定が入ることはほとんどないからだ。谷口や国木田も、 「キョンは休日も涼宮さんと一緒なんでしょ?」 と、誤解を招きそうなことを言ってきたりで、休日に俺を誘うということもない。つまりだ、 俺の休日に予定がないのはハルヒのせいでもあるわけだ。そんなことを知ってか知らずか、 ハルヒはもぞもぞとコタツに体を押し込めながら長門がテーブルに置いたみかんに手を伸ば している。見れば俺以外はもうコタツに入っている。朝比奈さんに至っては、 「暖かいです~」 と、幸せに浸っている。となるとだ、まあここはハルヒの隣に座るのが自然だろう。いや、別に 他意はないぜ?一番近いからそこに座るだけだ。それにハルヒの隣ということを考えなければ ベストポジションだ。なんたって真正面を見れば女神が居るからな。ちなみに長門は俺から見て 右、古泉は左の位置に居る。 「ちょっと!なんであんたがあたしの隣に座るのよ!」 近かったからだ。わざわざ遠回りするのも面倒だろ。 「まあいいわ・・・。結構大きいしね、このコタツ。それにしても暖かいわね」 そうだな。たまにはこういうのもいいよな。 「幸せです~」 と朝比奈さん。本当に幸せそうだ。あなたを見てるとこっちも幸せになってきますよ。 「そうですね。たまにはこんな日があってもいいでしょう」 古泉は俺と全く同じことを考えていたようだ。やめてくれ、微妙に気持ち悪い。 「・・・ぬくぬく」 見れば長門も上機嫌そうである。もうみかんの皮が6枚ほど長門の前に転がっている。 相変わらず素晴らしい食欲だ。 「むう・・・。でもこのまま何もしないのもつまんないわね」 そうか?俺は今日はこのままぼんやりしていたいがね。 「そんなじじくさいこと言ってると早く老けちゃうわよ?」 縁起でもないことを言うな。それにお前も子供じゃないんだから、落ち着けよ。 「ふん。童心をいつまでも持つことは大事なのよ。ね?古泉君」 「ええ、僕もそう思います」 お前は黙っていろ。このイエスマンめ。 「ああ、子供といえば。あんた子供に人気あるわよね?」 ハルヒはあっさりと話を変えた。割とどうでも良かったらしい。しかし、そうは思わんがね。 人気があるといっても。すぐに思い浮かぶのは妹とミヨキチくらいなもんだ。 「ええ~、でもあたしもキョン君は子供に好かれるイメージがありますよ?」 と、朝比奈さんが言う。朝比奈さんがそう言うならそうなのかもしれんと、俺のy=xのグラフ よりも単純にできている脳は勝手に結論を出そうとしていた。 「ね?やっぱりそうよね。じゃあさ、キョン。あんたも子供が好きなの?」 なぜそうなる。 「だってやっぱり好きなものには好かれるじゃない」 「そういうもんか?」 「そういうもんよ」 「まあ、少なくとも嫌いではないな。妹も、特に3歳ぐらいのころはホントに可愛かったな」 言いながら、その時の情景を思い出す。 「ふふ」 「どうかしましたか?朝比奈さん」 「いえ・・・。きっといいお兄さんだったんだろうなあと思いまして。目に浮かびます」 もちろん今もいいお兄さんですけどね。と、朝比奈さんは付け加えた。 「あたしもそれに関しては同感ね」 おお、ハルヒに褒められるとは。これ以上光栄なことはないね。 「もうすこし感情を込めなさい。感情を」 「ばれたか」 「当たり前でしょ?ふわぁ~。なんか喋ってたら眠くなっちゃった」 「あたしもです~」 と、朝比奈さんもハルヒのあくびがうつったのか小さなあくびをした。 「眠っちゃいましょう。もう二人寝てるし、あたし達だけ起きてても仕方ないわ」 言われてからそういえば長門と古泉が全く話に参加していなかったことに気づいた -いや長門に関してはいつものことだし、古泉も一度適当な相槌を打っていた気はするが-、 半立ちになりながらコタツの左右を覗き込むと本当に二人とも寝ているようだ。二人の 寝顔を見ながら、俺はなんだか安心してしまった。この二人はSOS団のことを信頼しきっている のだ。だからこんなにぐっすり眠れるのだろう。そう思うと嬉しいというか喜ばしいというか、そんな 気分になる。 「あんたは寝ないの?」 「いや、俺はいいや」 大体二人で横になったらどっちみち俺は寝れねえよ。などという俺の思考はハルヒには届かないだろう。 「ふ~ん、じゃあみくるちゃんも寝ちゃったみたいだし。あたしも寝るわね」 正面を見ると、女神の姿が見当たらない。おそらくハルヒの言うとおり、お眠りになってしまわれたの だろう。 「お菓子、一人で全部食べちゃダメよ?」 食べねえよ。ていうか無理だ。俺はお前や長門のような何回拡張パックをダウンロードしたかわからない ような胃は持ち合わせちゃいない。 「じゃあ、おやすみ」 ハルヒはそう言いながら寝転がる。 「ああ、おやすみ」 俺はその後、何十分かはわからないが。結構長い時間ぼんやりとしていた。ただ、俺も眠かったのだろう。 頭をコタツのテーブルに突っ伏すとそのまま眠りについてしまった。今日は本当にいい日だ。おそらく面倒事も 起こらない。さっきも言ったが、こんな日があってもいい。 だが、俺のそんな思いは目覚めとともにあっさりと否定された。 「・・・起きて」 静かな、しかしどこか強制力のある声が耳元からする。 「・・・起きて」 二度目のその言葉で俺は目を覚ました。目の前に見慣れた無表情がある。長門だ。 「ああ、長門か今何時だ」 「13時」 そうか、まだ1時間しか経ってないじゃないか。だったらもう少し寝させて・・・、 「キョン!起きたのね!キョンもトランプしましょ!」 いつもの11倍ぐらい目を輝かせながらハルヒはコタツの向こう側からこちらを見ている。 しかもなぜか朝比奈さんの背中に抱きつきながら-いわゆる強制おんぶ状態だ-だ。 「おいおいなんだ?とんでもないテンションだな」 「聞いて」 長門が話しかけてくる。長門がこんなにも自ら口を開くことははっきり言って珍しいことだった。 だから、俺はなんとなく嫌な予感はしていたんだ。 「なんだ、どんな厄介ごとだ?」 「・・・おそらく涼宮ハルヒの精神は14年ほど退行している」 見ればハルヒがターゲットを朝比奈さんから、長門に変えている。長門はハルヒに背中から抱きつかれながら 無表情でそんなことを言っている。なんてシュールな絵なんだ。そしていつもながらとんでもない話だ。 「あ~、精神だけか?」 「・・・そう」 そりゃあ厄介だ。 「そう。厄介です」 と、古泉がそれに反応した。 「見た目も退行してくれていれば、もう少しやりやすかったのですが」 「ふふ・・・さっき古泉さん、涼宮さんに抱きつかれて慌ててましたもんね?」 朝比奈さんがそんなことを言う。 「いえいえ、そんなに睨まないでください。不可抗力ですよ」 古泉はパタパタと両手を振る。別に睨んでなどいない、まあ不可抗力なんだしな。 仕方のないことだ。若干もやもやするがそれは気のせいだ。 「長門よ、そのこうなった・・・」 原因は?と尋ねようとして俺はやめた。なんとなく推測出来るし、多分俺のせいだろう。 だったらそんなことをわざわざ聞く必要はない。 「いや、これは何時ごろ治るんだ?」 ハルヒは長門に抱きつきながらびょんびょん跳ねているため、長門の顔は無表情のままがくがく 揺れている。ハルヒ、やめなさい。長門の頭が取れかねん。 「確定は不可能。ただ長い時間はかからない」 そうなのか? 「・・・そんな気がする」 なるほど、それが長門の意見か。今は長門が意見を言うということもそこまで珍しいということでもない。 「僕もそう思いますよ。これは一時的なものでしょう。まあ、多少厄介ですが。みんなで遊んであげれば、 自然と元に戻るはずです」 「ああ、俺もそんな気がする」 「ただ、トリガーというかキーというか。そういうものがある可能性は否めませんが、それもおそらくは簡単に 見つかるでしょう」 言いながら、こちらを見る。期待していますよと言わんばかりだ。やれやれ、また俺が握っているのか? そのキーとやらを。 「じゃあ、今日は皆で涼宮さんと遊びましょう!ね、涼宮さん」 「うん!」 と、ハルヒが朝比奈さんの問いかけに対して明るく可愛く答えている。今のハルヒに母性本能がくすぐら れているのだろうか。朝比奈さんもまんざらでもなさそうだ。 「じゃあ、キョン!トランプ!」 太陽の笑顔をこちらに向けてトランプを手渡してくるハルヒに対して俺は、 「へいへい」 と、命令に従いトランプをシャカシャカと切り始めた。結局ハルヒの精神が幼児化したところで、俺の ポジションが変わることはないのだ。 「あ!でもトイレ行きたい。キョン!ハルヒが帰ってくるまでに配っててね!」 そう言いながらトイレの方に歩いていった。どうやら記憶はあるらしい。そりゃそうか、俺の名前も覚えてる しな。あとこの頃のハルヒは自分のことを名前で呼んでたんだな、可愛らしいこった。 「みなさん、提案があります」 と、古泉がなにやら喋りだした。 「これから多分数多くのゲームをすることになると思うのですが・・・」 そりゃそうだ、なんたって身体はそのままだからな。体力はものすごいだろう。 「ええ、ですが。そのゲームにおいてですね、涼宮さんを最下位にさせるということは出来るだけ 避けたいんです」 ああ、なるほどね。俺は古泉の言いたいことを瞬時に理解した。ほかの二人もそうだろう。 「確かにな、そんなことになったらもっと厄介なことになりそうだ」 「ええ、ただ彼女は勘がいいですからね。手加減しているのを聡られないようにしなければ いけません」 そうだな、しかしまあ骨の折れる作業だ。 「仕方ありません。それに、こういうのも楽しいでしょう。僕は嫌いじゃないですよ」 確かに退屈はしなそうだな。その時、とたとたと足音が聞こえた。どうやらハルヒが帰ってきた ようだ。 「あ!配っててくれたんだ!ありがとうキョン!」 と、俺にいつもより数割増しの笑顔を向ける。おいおい、勘弁してくれ。素直なハルヒなんて 俺の想像の範囲内には居ないんだ。俺が混乱しつつある頭を何とか正常に戻そうとしている と、あろうことかハルヒはその混乱を増幅させる行為をとりやがった。すなわち、俺の脚の間に ドスンと座ったのである。そりゃあもう堂々と、それが当たり前のように。 「おい、何をしている」 「キョン!イス代わりになって~」 ああ、うんそういうことか。でもな、朝比奈さんでもいいじゃないか。 「う~んそれでもいいんだけどさ、みくるちゃんちっちゃいんだもん」 と、言いながらこちらを見上げる。顔が近いよ、顔が。それと髪からものすごくいい匂いがする。 これはまずい、どう考えてもまずい。 「いや、でもな・・・その・・人をイス代わりにするのはあまりいいことじゃないぞ?」 俺は何とか平静を保ちながら-これは奇跡的なことだ、自分の精神力に感服するね-、 ハルヒに言い聞かす。だが、 「うう・・・キョンはいや?」 と、ハルヒに潤んだ瞳で見上げられれば「嫌だ」などと言えるわけがない。 「ええとだな・・・その・・・」 「わかった・・・。じゃあ古泉くんのところに・」 「ハルヒ!」 「ふぇ?」 「嫌じゃないぞ、全然嫌じゃない。だからここに居なさい」 もちろんこれは古泉の為だ。さっきも大分困ってたみたいだからな、そうだお前の為なんだ。 だから古泉よ、そんなニヤニヤ顔でこっちを見るな。朝比奈さんもそんなに優しい目でこちら を見ないでください。 「え・・・?うん!ありがとう、キョン!」 そう言いながら思いっきり抱きついてくる。いや、だからそういうのはまずいと言ってるだろうに。 「あ~、ハルヒよ。前を向いた方がいいぞ。トランプがしづらいからな」 「あ、うん。ごめんね」 と、素直に前を向く。かくしてようやくトランプまでこぎつけた。これからおそらく何時間も遊ぶのだ。 それが終わる頃には俺はもしかしたら、死ぬんじゃないだろうか?そんなことを俺は本気で考えて いた。 結論から言うと俺は何とか死なずにすんだ。勝因はなんといっても、 「キョンの身体かたーい」 と、言いながら朝比奈さんの方にハルヒが途中で移動してくれたことだ。それでも移動するまでは トランプのババ抜きをしている時にハルヒが最初にあがると嬉しさのあまり俺に抱きついたり、先ほども 述べたのだがハルヒからやたらいい匂いがしたりと、俺のHPはもはや限界まですり減らされていた。 途中で朝比奈さんの方に行ってくれなかったら、間違いなく命はなかっただろう。その時に若干喪失感 みたいなものを味わったが、まあそれも気のせいに違いない。 それと、古泉の言っていた懸案事項も全く問題にならなかった。なぜって?そりゃあハルヒが 何をやらしても強かったからさ。元々3歳の割には語彙が多いなとかは思っていたが、頭の 回転の良さも昔からだったらしい。結局手加減どころか本気をだしても俺達がハルヒにかなうこと はなく、終始1位と2位をハルヒと長門が取り合うという形でゲームは行われていった。ただ、途中 人生ゲームをする時は朝比奈さんに漢字や意味を聞きながらうんうんうなづいてプレイしていたから 4位になっちまったけどな。ちなみに最下位は古泉だ。もちろん、手加減などしていなかったが。 そうして楽しかった時間はあっという間に過ぎ、ハルヒの、 「ねむ~い」 の一言で4時間にも及んだゲーム大会は終わりを告げ、俺以外の4人はあっさりと眠りについて しまった。ちなみにハルヒはといえばコタツには入らず、俺に膝枕をさせながら毛布をかけて眠りこけ ている。 ここでようやく冒頭に戻る。俺はなんとなくハルヒの頭をなでていた。なあハルヒよ?楽しかったか? 今度起きたら元に戻っていてくれよ?子供のお前も好きだけど、俺はやっぱり・・・。俺がありえない 程恥ずかしいことを考えているとパチッとハルヒが目を開けた。ばっちり俺と目が合う。 「ハ・・・ハルヒ・・・?」 「ねえキョン・・・」 「うん?」 「キョンはハルヒのこと好き?」 え~とだな、このハルヒは子供の方のハルヒだよな?ああ、間違いないだろう。自分のこと「ハルヒ」 って言ってるしな。じゃあ、大丈夫だ。嘘をつく必要もない。ハルヒの頭をなでつけながら俺は出来る だけ優しい声で言った。 「ああ・・・好きだよ」 「ホント?」 「本当だ」 「元に戻っても?」 おいおい、こいつわかってやってんのか?いや、まあ大丈夫だろう。ハルヒはこれを夢と処理するはずだ。 「ああ・・・元に戻ってもだ」 「ふふ、ありがとうキョン」 と、ハルヒは更に言葉を続けた。 「あたしも・・・好きよ」 !!驚いてハルヒの方を見るが、ハルヒはもう眠ってしまっていた。いや、さすがにこの早さで寝るのは ガリレオ・ガリレイが天動説を唱えるくらいありえない。俺はおそるおそるハルヒの頬をつねってみるが、 何の反応もない。本当に眠ってしまったようだ。 「ふう」 俺はしばらく考えてから寝てしまうことにした。考え事なんてもともと俺の性分じゃないんだ。そんなもの は古泉あたりにまかせておけばいい。俺はそう決めてかかると、眠りの世界に身を委ねた。 起きると、周りにはもう朝比奈さんと古泉の姿はなかった。右の方を見ると長門がみかんをパクついて いる。お前、それ何個目だよ。 「長門、みんなは?」 「もう帰った。あなたたちもそろそろ帰った方がいい」 そうか、言われて時計を見れば確かにもう結構な時間である。これは帰った方がよさそうだ。 「ハルヒ、帰るぞ」 「ん・・・ううん」 そういいながらもそもそと起き上がる。 「え!うそ!もうこんな時間?どうして起こしてくれなかったのよ!」 どうやらもとのハルヒに戻っているようだ。なんとなくわかってたけどな、だからみんなも帰ったんだろう。 それよりお前はばっちり起きてたし、誰よりもはしゃいでいたぞ。 「いや、俺たちは全力でお前を起こそうとしたがどうしてもお前が起きなかったんだ」 「ホント?有希?」 「本当」 と、長門はゆっくり頷いた。 「そっか・・・」 なんだか少し寂しそうだ。 「すまん・・・無理矢理にでも起こせばよかったか?」 「ううん、いいのよ。ありがとね」 おいおい、元に戻っても素直なまんまか。勘弁してくれ。 「なあに変な顔してんのよ」 「いや、なんでもない」 そう言いながら、帰る準備を進める。さて、 「じゃあ、帰るか」 「そうね」 「じゃあな、長門。いろいろありがとな」 「いい」 「バイバイ有希、また来るからね」 「・・・わかった」 長門がゆっくり頷くのを確認してから俺たちはマンションのドアを閉めた。 帰り道、ハルヒがこんなことを言い出した。 「ねえキョン」 「なんだ」 「あたしね・・・変な夢を見たの」 やっぱりきたか、でもなハルヒそれは夢じゃないんだぜ。 「どんな夢だったんだ?」 なんとなく聞いてみたが、おおよそハルヒの回答は予想がついた。なんたってみんなに 甘えたおした挙句、最後には俺にあんなことを言われたんだ。ハルヒにとっては悪夢 以外の何物でもないはずだ。 「それがね」 と、ハルヒはこちらに顔を向けながら続ける。そして笑顔で顔を輝かせ、 「すっごくいい夢だったのよ!」 と、言ってのけた。おいおい、待ってくれその反応は反則だ。クソ、顔が熱い。ハルヒの 方を見れん。 「ちょっと、何で顔をそらすのよ。ていうか顔赤いわよ?キョン」 夜でもわかるくらい俺の顔は赤いのか、恥ずかしい話だ。仕方ない、喋ってごまかそう。 「あ~、ハルヒよ。俺も変な夢を見たんだ」 「へ~、どんな夢よ?」 「それがな」 俺は言葉を続ける。 「ものすごくいい夢だったんだ」 なぜか、ハルヒの顔が朱に染まった。 fin
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今日は暖かい空気に包まれた2年生になってはじめての5月。 別に変わらないと思うかも知れんが、俺にとってはとてもいいことなのだ。 なんといっても、ハルヒが大人しく、何も暴走しないにもかかわらず、ご機嫌なのだ。 俺の顔を見るなり「おはよっ!今日から5月ね。気合入れていくわよ!!」というものの、何も起きない。 しかし、この後、俺が想像もしなかった事態になっていたことを知らされることとなった。 部室に行くと、そこには長門は居なく、別の奴がいた。 古泉一樹。自称、超能力者。 コイツだけとは珍しい。なにか企んでいるかのような笑みを浮かべている。 「お待ちしておりましたよ」 「何の用だ?また、ハルヒ絡みか。手短に頼むぞ」 「幸いです。僕も手短に済ませて置きたいことなので」 なんだ。もったいぶらずに言え。 「これは失礼。あなたにとってこれがいいことかは分かりませんが」 だからなんだ。気になるから焦らすな。 「実はですね。僕たちの力が少しずつ、使えなくなっているんです」 どういう意味だ? 「僕たち『機関』の方々の数名が閉鎖空間に入れなかったり、また入れたはいいものの、力が使えない、と言う人が続出してるんです。どういう意味か分かりますか?」 正直に言う。さっぱり分からん。力が使えなくなっただ?ハルヒが超能力者がいないものと本当に信じてしまったのでもいうのか? 「理解できてるじゃありませんか。その通り。彼女はもう信じていない。または、半分以上信用していない、ということです。使えないのは超能力者だけではありません。多分、長門さんや朝比奈さんもそうです」 「ちょっと待て。それは矛盾してないか?朝比奈さんがタイムスリップできなくなったら、未来の朝比奈さんは実在しないぞ。つまりだ、この場所で会った大人の朝比奈さんは居なくなるのか」 「いえ、その心配はありません。朝比奈さんの使っているタイムスリップシステムタイム・プレーン・デストロイド・デバイス、略してTPDDは未来に涼宮さんではない方が造られているので、TPDDの使用許可さえすれば、使わせてもらえるはずです。出来なくなるのはおそらく未来との連絡。つまり、連絡できる間に朝比奈さんは未来に帰らなくてはならないということです」 つまり、朝比奈さんが元居た時間対に俺たちからすると未来に帰るのも遠くない、ということか。 「そういうことです」 じゃあ、長門は? 「長門さんは統合思念体との伝達が出来なくなる恐れがあります。それか…」 「それか、なんだよ」 俺がそういったとき、調度いいタイミングで長門が入ってきた。 聞くに聞けない状況だ。 朝比奈さんが未来に帰り、長門がどうなるんだ? そういえば、大人バージョンの朝比奈さんと初めて会ったとき、久しぶりといっていてな。それはひょっとしたらこれが原因で帰らなければ為らなくなったんじゃなんだろうか… その後、ハルヒが掃除当番で遅れながら来た。 「あれ?みくるちゃんは?」 知らん。俺が来たときも居なかった。 「先程いらして今日は用事があって来れないと言っておくように言われました」 「そうなの。ま、いいわ。お茶は私が酌むわ!」 大丈夫なのか、という心配を抱きながら俺はまたさっきのことを考えていた。 そのとき、俺の携帯が鈍く唸った。思わず叫びそうになった。 メールが届いただけだが、そのメールを見てどれだけ驚いたか。 「すまない。俺はもう帰る」 「なんで?」 「おふくろからだ。直ぐ変えるようにと書いてある」 「ホントに?ま、いいわ。直ぐ帰りなさいよ」 俺は部室を後にした。 実はおふくろからというのは噓だ。 メールの送り主は光陽園駅前公園で待っていた。 「いきなりどうしたんですか?朝比奈さん」 そう、呼び出されたのは朝比奈さんになのだ。 「あの、話したいことがあるんです…えっと、禁則事項とかあるからあんまり分かりにくいと思うけど…」 「大丈夫です。それは理解の上です」 「良かった。で、本題なんですけど…私、未来に帰らなくてはならなくなってしまいました」 恐れていた事実に俺はただ愕然とすることしか出来なかった。 「上司からの命令なの…えっと、涼宮さんがなんていうか未来人を信じなくなって、いままでできた禁則事項の交換?見たいなのが出来なくなってしまうそうなんです。でね、禁則事項が普通に言えるようになってしまうんです。それだとこちら側からすれば歴史を変えることに繋がってしまうの。だから、後もう少しの間で電波が持つか持たないかって感じで、だから禁則事項が禁則事項なんです。ごめんね、わからないよね。でも、ここに居られるのもあと少しみたいなの…」 悲しそうに言う朝比奈さんを見て、ハルヒは何を考えてやがると思った。 「それだけです。ホントにいきなりでごめんね。じゃあまた明日部室で」 俺はくたくたになりながら家に帰った。 まさかこんなことになるとは思わなかったしな。 二人が言ったことがほとんど一致してしまう。恐怖とも言える。つまり、あと一人からもこんな話が… そう思いながら鞄を開けると何か紙切れのようなものが落ちたのを感じた。 見るとそれは栞だった。そこには手で書いたとはとても思えない字で『今日 午後7時 私の家に』と。 普通に考えれば誰かなんてわかんないだろが、俺にはわかる。 午後7時。俺は見慣れたマンションの見慣れた部屋に居た。 「………」 「で、何の用だ?」 もう分かってるさ。もう3回目だぜ?これでわかんないのは谷口ぐらいだ。 「上手く言語化できない。情報の伝達に齟齬が発生するかも知れない。でも、聞いて」 その前ぶりを聞いたのは1年前ぐらいか。もう1年経ったのか。俺もアレから少しは変わったな。もちろん、こいつも。 「私は、今、ここにいる。でも、もうそれも長くない。涼宮ハルヒが宇宙人の存在を信じなくなったから。私の使命は涼宮ハルヒを観察し、入手した情報を統合思念体に報告することだった。でも、伝達するのも今は限界が来ている。惑星表面にあった情報フレアも観測できなくなった。ここに不思議なことが起こることはもうないと思われる。あなたとの会話も統合思念体からの命令でしているが、それすらも出来なくなっている。地球上にいる有機生命体は100人以上がその犠牲となっている。そして統合思念体が出した結論。有機生命体の回収。私たちを回収し、涼宮ハルヒの観察を終わりにする。私はもちろん、喜緑江美里も回収される。朝倉良子のとき同様、我々は光となり、この世から身を引く。私たちの存在を知っている人には統合思念体が情報操作を行い、転校したことになる可能性もあるが、比較的高度な確率で私たちが地球人類にナノマシンを注入し、記憶を綺麗に忘れさせる方法の2種類ある。どちらにせよ、私たちはこの世から消え去る」 随分でたらめな話だ。なんだよ、それ。結局俺はかやの外か。 「ちがう。あなたは涼宮ハルヒにとっての鍵。それだけは変わらない。この突然改変もあなたが原因となり出来た」 俺が犯人なのか?俺は普通の人間だぞ?変わったことは何もしていない。 「私もそれは分かっている。ただ、問題なのは涼宮ハルヒ。彼女はあなたという存在に好意を示している。 「はあ?あいつが、俺に?馬鹿をいえ。あいつは恋愛感情なんて精神病の一種だと思ってる奴だぞ?それを今更。しかも何で俺」 「彼女はちょっとしたことでも感じてしまうほどデリケート。だからちょっとしたあなたの優しさでも恋愛と感じとってしまうほど」 俺があいつに優しく?冗談はよせ。 「冗談ではない。あなたは彼女のご機嫌を損ねてはならない。特大な閉鎖空間が発生し、そこに閉じ込められる恐れがある」 そういえば、前にもそんなことがあったな。 「私も出来る限りの全力を出して手助けする。あなたの望みなら私はそれに従う。それが私の最後の使命」 そうか…なんでもいいのか? 「いい」 「じゃあ。明日、ポニーテールで登校してきてくれないか?」 「私の髪型ではポニーテールは困難」 「なんでもするんじゃなかったのか?」 「…分かった。実行してみる」 俺のわがままを聞いてくれてありがとよ、長門。 「別に構わない。コレが最後の望みにならないように」 そういって俺は長門の部屋をあとにした。 次の日の放課後。俺は真っ先に部室に向かった。 ドアをノックしても応答がない。 部屋に入ると長門がいつもの場所で読書していた。髪型は昨日の俺がリクエストしたポニーテールで。 「長門、良く似合ってるぞ」 長門は何も答えなかったが、嬉しそうな雰囲気だった。 「あら、キョン。もう来てたの。今日はやけに早いわね。あら?有希。今日はポニーテールなんだ。そうだ!」 そういうと俺を廊下に追っ払い「いいって言うまで入ってきちゃ駄目よ」と言い残して部室に入った。 すると、朝比奈さんと古泉が並んでやってきた。なんでそんな組み合わせなんだ? 「そこでばったりあったんですよ。昨日あなたにいった情報を交換したかったですしね」 そうか。 「キョンくんはなにしてるの?涼宮さんがお着替え中?」 「さあ。俺もさっぱりで」 すると、部室から「もういいわよ」という声が聞こえた。 ドアを開けて驚いた。 着替えていたのはハルヒではなかった。 いつも朝比奈さんが着てるメイド服をポニーテールの長門が着ていたのだ。 すると、取り繕った笑みを浮かべて古泉が 「わあ。長門さん凄くお似合いですよ」 「でしょ?可愛いでしょ?たまにはこういうのもいいわよね。みくるちゃんは今日は着替えなくてもいいわよ」 機嫌よくいうハルヒに朝比奈さんは嬉しそうにしていた。 「有希って背小さいし、顔整ってるしで萌え的にはいい素材なのよね。それに今日はポニーテールだし完璧だわ!」 と、いうなり長門にお茶を運ばせるように命令した。 順番にお茶を配っている長門をみると、表情が変わらなくても、内心では緊張していたのかもしれないと思う。 「お茶…どうぞ」 俺にそういってお茶を渡すと元の場所に戻ってまた本を読み始めた。 なんか変な感じだな。無表情兼無口の長門と癒しキャラである偽メイド朝比奈さんが入っているので長門兼朝比奈さんになっている。そこに黄色いカチューシャを着けて団長と書いてある腕章をつけたら長門兼朝比奈さん兼ハルヒになってこれまた厄介なことになりそうだな。 その帰り、ふと古泉に尋ねた。 「なあ、古泉」 「なんでしょう」 「ハルヒがこの状況を作りあげたのなら元に戻る方法もあるんじゃないのか?」 「あるにはあります。でも、とても困難です」 「どうやるんだ?」 「そうですね…涼宮さんはあなたを好いていらっしゃる。ならば閉鎖空間であなたが本当に好きな人を告白してみればいいのですが、いまの涼宮さんが閉鎖空間を生み出すのは困難に近いんです」 まてよ…昨日、長門は機嫌を損ねると閉鎖空間が出来るといっていた。そして閉じ込められると。それと今の話。 「なんとかなるかも知れないぞ。明日、早速実行だ」 「あら?有希だけ?」 ゆっくり頷く長門。俺は今掃除用具入れの中に隠れている。ちなみに古泉は窓の外の足の踏み場が少ししかない場所。 朝比奈さんはホワイトボードの後ろに椅子を置きその上。ハンガーラックで調度いい具合に見えない。 「有希、今日はポニーテールじゃないんだ」 反応しない長門。 「ん。何?私を虐めてるの?有希」 すると、長門は本を閉じ、新しい本を出した。 「もう。私、帰る」 そういうと怒ったようにドアを閉めた。 「長門。ホントにコレでいいのか?」 「いい。これで今夜閉鎖空間が現れる」 夜俺が眼を覚ましたのは部室だった。 「キョン、やっと起きたの…またここよ。もう、この時期は変な夢を見るのよね」 そうかい。俺は夢じゃないのくらいわかる。 「キョン?どうしたのよ。変よ」 ま、きにするな。 「気になるわよ!…ま、いいわ。夢のあんたも変わり者ね」 「お前にだけは言われたくないね」 「そう。ね、ねえキョン。ちょっと外に出ない?」 そろそろくるか、古泉の言っていたことが。 「あ、あのね。夢のあんたにいうのもその、なんなんだけど…私、言える自身がないから、あんたにいうわ」 なんだ、このハルヒは。本当にハルヒか?不気味だ。 「あ、あ、のね。私、ね。アンタのことが」 そういうハルヒは俺の肩に手を置いていた。そんな俺はその手を掴んで、言い返した。 「ハルヒ、俺も言いたいことがあるんだ」 「え…?」 「あのな、俺実は…」 夢から覚めた俺は気分がすっきりしていた。 俺は迷惑だと思ったが、長門に電話した。 「…」 「長門か?あのさ、世界変わったか?」 「変わった。必要以上に・・・」 そうか。しかし何が必要以上に変わったんだ? 「・・・秘密。あえて言うならアナル。」 「なあ。ひとつ頼みがあるだが…」 次の日。 俺はまた忍足で部室へ向かった。 「ん?あら、キョン。遅かったじゃない。今日は古泉君がコスプレしてるんだからね」 古泉はいつもの場所で微笑んでいた。今日は映画で使った超ミニスカのウェイトレスの服だった。さらにツインテールだった。 「ねぇキョン」 「なんだ?」 「キョン、実際問題誰が好きなの?」 んなもんいない。強いて言うなら朝比奈さんだな。あのお方こそ目に入れても痛くないというものだ。 「ばかじゃないの」 馬鹿で結構。今は何言われても頷ける。 すると長門と朝比奈さんが入ってきた。またこのコンビか…朝比奈さんは少し涙目になっていた。 「みくるちゃん?泣いてるの?」 「い、いえ。違います。欠伸しただけです」 「そう。それよりキョン。あんた昨日なんで来なかったの?」 「行かなかったのは俺だけじゃないだろ?」 「責任者はあんたよ!!」 「何でだよ」 「何でもよ!!」 俺たちが言い合いをしてるときだった。 「ふふ」 微かだが笑い声が聞こえた。 その声の持ち主はハルヒでも朝比奈さんでも長門でももちろん俺でもない。 古泉が控えめに俺のアナルを見つめてた 「古泉?」 そういったかと思うといきなり満面の笑みを浮かべて 「古泉君がキョンを襲ってるわ!!」 そうだな、俺はそういって襲ってくる古泉から逃げていた。 昨日コイツに言ったのは間違えだったか? でも、朝比奈さんだといっても間違いじゃないんだしな。これでよかったんだ。 昨日俺が放った言葉。 俺は―――古泉以外のSOS団全員が好きだ。 ♪お・わ・り♪
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「東中出身、涼宮ハルヒ。ただの人間には興味ありません。 この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたらあたしのところに来なさい。以上」 宇宙人?長門のことか? 未来人?朝比奈さんか? 超能力者?これは古泉か? 異世界人?……それは見たことないぞ。 「あんた宇宙人なの?」 いや、違う。 「じゃあ話かけないで。時間の無駄だから」 ちょ、ちょっと待てよ。 「普通の人間の相手をしている暇はないの」 じゃあ俺はなんなんだ。お前にとって俺は、普通の人間は必要じゃないのか? でも、俺は……それでもお前が――。 『涼宮ハルヒの交流』 ―第一章― 放課後の誰もいない教室で目覚める。 あれ、授業は?もう終わってたのか。くそっ、ハルヒも起こしてくれればいいだろうに。 ……あぁ、そういえば昼間けんかしちまったもんな。 冷静になってみると確かに俺が悪かったと思う。が、そんなに激怒するようなことでもないと思うんだがな。 とりあえず謝るだけは謝らないと。すぐには機嫌は直らないんだろうけどな。 で、今何時だ?きっと今から部室行っても怒鳴られるだろう。まぁそれでも行くしかないか。 それにしてもどうやら不思議な夢を見ちまったようだ。はっきりとは覚えていないがどうやら一年前の夢か? 入学式、出会った日のハルヒの自己紹介。その部分を見ていたことはなんとなくだが頭に残っている。 ……懐かしいといえば懐かしいか。 俺達も2年生になり、新入生を迎える立場となったわけで、それなりに勧誘もやってはみたのだが、 SOS団に入るなんて物好きなぞ結局現れなかった。 まぁ普通の人にはわけのわからない団体だしな。 そのままずるずると入部者もないまま、もうG.Wが終わってしまった。 ということは、我らがSOS団もそろそろ一周年ということか。 これからも色々とめんどうなことになるんだろうか?いや、なるんだろうな。やれやれ。 ……さて、部室に向かうとするか。 ◇◇◇◇◇ そういえば日も長くなったな、なんて考えながらも部室への道を歩いて行くと後ろから、 「おや、今からですか?やけに遅いですね」 聞き覚えのある声に立ち止まって振り返る。 「古泉か。ちょっと教室で寝てたらこんな時間になっちまってた」 「それはそれは。となると涼宮さんもご立腹ですかね」 「だろうな。でもお前と一緒なら一人で行くより少しはましかもな」 「そうかもしれませんね。そのせいですか?先ほどから浮かない顔をしているようですが」 「まぁそれもないわけではないが。実は昼間ハルヒと少しばかり激しいケンカをしちまってな。 それも含めておそらくかなり怒られるだろうからな。そりゃあ足も進まなくなるさ。 閉鎖空間、大きめのやつができたんじゃないか?すまなかったな」 「おや、それは不思議ですね。今日は閉鎖空間はまだ発生していないはずですが……。 ということは実際にはそれほど怒ってらっしゃらないのではないですか?」 ……そうなのか? あれで閉鎖空間ができてない?どういう事だ? 「それならそれでいいが…。どっちにしろ後でちゃんと謝っておくよ」 「そうですね、それがよろしいかと。お願いしますね」 古泉はいつものように笑って言う。 「ああ、あとそれに加えてさっき寝てた時に一年前の入学式の日の夢を見てたんだ。 そのせいで、ああ、俺は一年間かなり無茶をやってきたな、そしてこれからも無茶をやるんだろうな。 と、さらに憂鬱な気分になってたってわけさ」 「ふふっ、まぁそういうことにしておきましょう」 何がだよ……。古泉と並び部室へ向かいながら、思いついたことを話してみる。 「ところでさっき見てた夢のせいで今ふと思ったんだが、宇宙人、未来人、超能力者は簡単に現れたくせに 結局のところ異世界人は現れなかったな」 「おや、あなたは現れて欲しいのですか?」 そんなばかな。これ以上の騒動はごめんだぜ。 「いや、そういうわけじゃないが。どうしてなのか少し気になってな」 「どうしてだと思いますか?」 予想外の返答に思わず足が止まる。 「わかるのか!?」 「わかる…、とは言えませんね。あくまで仮説です。それでもよろしければ」 古泉に促され、再び歩き出しながら話を続ける。 「とりあえず聞かせてもらおう」 古泉はどう話そうか少し考えているようだったが、すぐに話し始めた。 「涼宮さんはこの世界の神のようなものであると僕が言ったのは覚えていますか?」 「……そんなことも言っていた気はするな」 「僕達には認識しえませんが涼宮さんの神性はあくまでもこの世界でのものと考えられます。 その根拠、とまでは言えませんが、宇宙人、未来人、超能力のどれもがこの世界の中での者です。 もし、……そうですね。この場では異世界としておきましょうか。異世界にもその力が及ぶのであれば、 我々と同様に涼宮さんの側に呼び寄せられているでしょうからね。おそらくは、SOS団の6人目として。 あるいは、……あなたが異世界人なのでしょうか?」 ニヤリと笑い古泉は言う。 「っ!?おいおい、そんなはずはないだろ?」 たちの悪い冗談はやめろ。頼んでやるからやめてくれ。 思わず慌てふためいてしまった俺を横目に、あいもかわらず涼しい顔で続ける。 「ふふっ、冗談です。前にも言ったように、あなたはれっきとした普通の人間ですよ」 「やれやれ、勘弁してくれよ」 俺の少し大きめのリアクションも気にせず、古泉は続ける。 「異世界人というのは少し特殊でして、未来人や超能力者のように力を与えれば良いというものでも、 宇宙人のようにその存在を創造すれば良いというものでもありません。 異世界に存在している、という条件が不可欠になります。となると、まずは異世界から創らねばなりません。 その気になればできるかとも思えますが、そこから人を連れてくるとなると、それは誘拐に近い行為です。 さすがにそこまではできないのでしょう。涼宮さんの良心が咎めるのかもしれませんね」 「あいつにそんな常識が通じるとは思えないがね」 「いえいえ、そんなことはありませんよ。以前にも言ったように涼宮さんはちゃんと常識を持った方です」 ……ほんとかよ。 「あるいは、異世界というものがすでにあるとしても、そこにも涼宮さんのような力を持った者、 つまり『神』が存在して、涼宮さんからの干渉を防いでいたりするのかもしれませんね」 なるほど、それならありえるかもな。 「それだと向こうの神様も必死だろうな」 ハルヒから再三に渡って人員を要求されている異世界の神様には同情を禁じえない。 とりあえず面識もないが謝っておく。うちのハルヒが迷惑をかけてすいません。 「まぁ、全て僕の仮説ですけどね。もちろんそれなりに自信はありますが。 どちらにせよ、この説がある程度でも当たっているならば、異世界人が現れる可能性は低いと思われます」 確かに、話を聞いている限りにおいては、なるほど、と納得させられるような内容だ。 まぁ、別に俺にとっては現れて欲しいわけでもないしな。いや、むしろ現れないで欲しい。 「あなたに言うべきか、少し判断に迷いますが、あなたも興味があるようですので話しておきましょう」 古泉は少し考え込むような仕草を見せた後、立ち止まって話し始めた。 「実は過去に3回、涼宮さんは異世界人を呼ぼうと試みています」 な、なんだって。どういうことだ? 「それが元から存在した世界なのか、涼宮さんがわざわざ創り出した世界なのかはわかりません。 ですが実際にここではない世界に干渉した力の発現を感じました」 「それは、例の『なぜだかわかってしまうのです』ってやつか?」 「そうです。根拠はありませんがそう感じました」 なるほどな。 「でも、それじゃあ異世界人ってのはもうどこかにいるんじゃないのか?」 「いえ、それが成功したことはありませんので、異世界人はまだいません。それに……」 古泉は笑顔になり、再び手で促し歩き出す。 「一年前、あなたと出会ってからは一度もありませんのでご安心を」 ◇◇◇◇◇ 古泉の話について深く考える間もなく、すぐに部室に到着する。 少し考え込む俺を後ろに古泉がドアをノックすると、 「はあぁい、どうぞぉ」 と、いつものように朝比奈さんの可愛らしいボイスが出迎えてくれる。 古泉はいつものようにドアを開け、いつものように 「すいません、遅くなりました」 と挨拶を交わした後、いつものように入って……は行かずに、ドアを閉めてこちらに向き直る。 「ん?なんだ?」 古泉は珍しく真剣な面持ちで 「申し訳ありませんが、少しこのままここで待っていてもらえませんか?」 「あ、ああ、構わないが?」 「すぐに戻りますので」 そう言葉を残し、部室の中へと入って行く。 一体なんだってんだ。異世界人でもいたのかねぇ。けど俺が入れない理由にはならないか。 部室の中からは微妙に声が聞こえる。 「――いえ、たいしたことではありませんので」 「そう、まぁ別にいいわ。まぁ古泉君は優秀だし、色々あるんでしょ。誰かさんと違って」 どうやらハルヒと何かしらの会話をしているようだ。 っておい!誰かさんて誰だよ?俺か?……まぁ俺のことなんだろうが。 「それで申し訳ありませんが、まだ少しやることがありまして、今日はこれで失礼させて頂きたいのですが」 「そう?まぁ仕方ないわね。古泉君は優秀だし、色々あるんでしょ。誰かさんと違って」 くそっ、また言いやがった。そんなにダメか?ダメなのか俺は? 「すいません。それと、彼もお借りしたいのですが、宜しいでしょうか?」 「えっ、俺か?」 「んー、別にいいけどこいつ使えないわよ。古泉君と違って。」 「ったく……。そのことは悪かったって、謝ったろ?勘弁してくれよ。 あ、古泉、少し待ってててくれ。これ片付けるから」 って、また言った。普通3回も言うか!?さすがにそれは酷いだろ? ……じゃなくて、ちょっと待て。中で今俺が返事しなかったか?いや、間違いなく俺だよな。 落ち着け。そんなはずはない。俺はここにいる。……でも確かに今のは俺だ。 何が起こってるんだ?どうなってるんだ?と、考えていると古泉が顔を出し、 「すいませんが屋上で待っていてもらえますか?すぐに向かいますので」 と、小声で簡単に告げる。 色々と聞きたいことはあるが、ここは仕方ない。とりあえず屋上に向かうとするか。 ◇◇◇◇◇ 第二章へ
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涼宮ハルヒの24 シーズンⅠ市内探索 涼宮ハルヒの24 シーズンⅡそれぞれの休日 涼宮ハルヒの24 シーズンⅢ
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第四章 これが、ハルヒの夢。 俺の目の前には、360°不毛の大地が広がっている。 上には、全てを焼き尽くすような太陽。あいつの夢にしては、何と殺風景なのだろうか。 そういえば、長門は、「夢の中は、涼宮ハルヒの思念を反映し易い状況である。」とか言ってたな。 つまり、ここではハルヒの願い事は、ほぼ全て叶うという事だ。 この灼熱の空間もあいつが生み出したのか?閉鎖空間よりタチが悪い。 神人は出ないだろうが、長門とは違う、ハルヒの想像通りの宇宙人が出てもおかしくはないな。 ウダウダ考えても仕方ないので、俺は歩き出す。とりあえず、ハルヒを探さねば……… だが、何処へ行けば良いのか分からない。目的のハルヒの位置も分からなければ、入口も出口も無い。 周りは全て同じような光景。 あてもなく、しばらく歩く。 「暑い、暑すぎる。」 独り言が勝手に出てくる俺は末期なのだろう。ほら、蜃気楼で周りが歪んで見える。 おや、そろそろ、お迎えが来たようだ。上から天使が降ってくる。 テ●ドンもびっくりのもの凄いスピードで。 ………降ってくる? 「どいてどいてー!!」 そんな事言われても、避けれる訳が無い。 「ぎゃっ!!」 痛ってーなこの野郎。 「ひっ!?キョン?」 やっと会えた。 「よぉ、ハルヒ。」 「ち、近づくなー!!」 ハルヒはふらふらと逃げ出す。 「待てよ!!」 俺は力を振り絞って、ハルヒにタックルをする。 「う゛うぅぅぅ。」 ハルヒは地面に顔をぶつけたようで、かなり痛がってた。 「悪い。大丈夫か?」 「大丈夫な訳無いでしょ!!バカキョン!!」 逃げ出すお前が悪い。 「だって、それは…」 それは何だ? 「あたしがあんたを殺そうとしたから。」 バツが悪そうに、ハルヒはポツリと漏らす。 「ごめん。」 「全く持ってお前らしくない言葉だな。」 「本当にごめん。」 「ごめんは禁止だ。」 「何であたしがあんたに従わないといけないのよ。」 申し訳ないと思うなら黙ってて欲しい。 「分かったわよ!!ところで、ここ何処?あたしがどうしてこんな場所にいるの?」 「夢だよ。夢。」 まさか、長門が俺とハルヒの脳内をリンクした事を俺が説明出来る訳ない。 「ふーん。だったら現実世界は大変なのね。夢が覚めたら、殺人未遂で豚箱入りか………全て失っちゃった。」 「大丈夫だ。多分、俺もお前も無事だ。」 「でも、明日からあんたに会うの辛いわ。」 「俺は何にも思っちゃいないよ。」 「嘘よ。嘘でしょ!!」 激しい口調でハルヒは続けて言う。 「また、あたしに殺されかけたらどうするの? もう、嫌だよ………こんな辛いの。」 ハルヒの瞳は潤んでいた。泣いているのだろうか。 「な、泣いてない!!」 指摘した途端、上着の袖で顔を拭う。やっぱり、泣いているな? 「煩い!!」 分かった。分かったから落ち着け。 「じゃあ、腕貸せ。」 ハルヒは俺の腕を勝手に使い、枕にしやがった。 「少し、休む。」 下が凸凹な地面なだけに、少し痛い。 「少し、落ち着いてきたかな。」 それは、よう御座いました。 「少し冷静になって考えたの。」 「何を?」 「何にせよ、これ以上キョンに迷惑を掛けたくないの。」 今まで、数々の悪行を重ねた奴が何を言う。 「だからさ………」 「あぁ。」 「あたし、死ぬわ。」 「は!?」 その時の俺は相当マヌケ面だったらしい。 ハルヒは急に吹き出した。 あくまで、表面上。目は笑っていない。なんか腹が立った。 おい、ハルヒ。 「ん?何、キョ…」 ハルヒが言葉を詰まらせたのは、俺がこいつの胸倉を掴んだからだ。 「何言っているのか分かっているのか?」 「……当たり前よ。」 「それで誰が喜ぶ?」 「………」 「お前が死んじまったら、何にもなんねぇだろ!!」 「で、でも……」 「俺達には、お前が必要なんだ。」 そうだろう?朝比奈さんや長門、阪中や谷口と国木田のアホコンビとか、鶴屋さんに森さんや新川さん。 その中に古泉も入れてやっても良い。 みんながお前を必要としてるんだ。 そして……… 「今現在、俺はお前が心から愛おしい。」 俺はハルヒを抱いた。力強く、精一杯抱いた。 ハルヒの顔は、見えない。いや、見れなかった。恥ずかし過ぎる。こんなこと。 「やっと、あたしの気持ちに気付いてくれたのね。」 「……カマかけやがったな?」 「バレたか。でも、こうしてあんたを急かさないと、いつまで経っても中途半端なままよ。どうせ夢だし。」 恥ずかしい。 「嬉しい。本当に。」 ハルヒの手が俺の首にかかる。 「ねぇ気付いてた?あたし、あんたに沢山アプローチかけてたの。」 「知らないな。」 「………バカ。」 ハルヒは少し膨れた。その顔も可愛いぞ。 「変な褒め言葉ね。」 変で悪いな。 「あたしね…」 何だ? 「キョンが好き、でも、あんたはいつも振り向いてくれなかった。」 そんなつもりは無かったのだが。 「恋心が憎悪に変わっちゃったのよ。だから、あんなことした。多分。 苦しかったわ。毎日が地獄だった。やっぱり、恋の病は重い精神病ね。」 これがハルヒなりの解釈なのだろう。 こいつは、呪いのナイフの事なんか覚えていないのだ。 それはあくまで、表面上だけだが。 「夢なら覚めないで欲しいな。」 「大丈夫、俺が覚えてるさ。」 「本当?」 「本当だ。お前が願うなら、何でも出来る。」 「信じるからね。」 …………!? 「ハルヒ。」 「ん、何?」 「疲れたろ。」 「まあね、精神的にボロボロって感じよ。」 「お前はよく頑張ったよ。 幾日も悪魔の囁きに耐え、自分の感情をよく抑えられたもんだ。」 「でも、結局負けちゃった。」 「十分さ。だがこれで、お前の重荷も晴れた。だから、今は少し休め。」 「あんたは?」 「俺か?俺はまだ役目があるみたいだ。」 「……大変なのね。」 これが大変で済むのなら、まだ楽な方だ。 「少しだけ、行ってくる。」 「待って!!」 何だ?急にハルヒが呼び止める。 「もし、あんたがこの夢を覚えてたら、あたしに言って欲しい言葉があるの。」 プロポーズの言葉か? あまり、恥ずかしいのは言いたくないぞ。 「似たような物よ。」 そう言いながら、ハルヒは俺に、 ある『愛言葉』を耳打ちをして、送り出した。 「行ってらっしゃい!!」 「ああ、またな。」 「あんたが無事で帰って来るって、ずっと信じるから。」 しばらく歩く。 さて、この位離れれば良いか。 なあ、朝倉さん。 「よく気付いたわね。わたしがいる事に。」 「よく考えれば、出来過ぎた話だよ。」 ハルヒの創造力が、ここまで忠実に具現化する事は、今までに無かった。 ましてや、人々を殺人に巻き込んだなんておかしすぎる。 考えられるのは一つ。 俺の存在を危険視した者がハルヒを洗脳し、殺害を企てた。 それが、お前ら情報統合思念体の急進派だった。 朝倉は表情ひとつ変えずに微笑んでいる。 「そこまで、思索出来のは上出来ね。 だけど、あなたはまだ、この話の真実を知らないみたい。」 真実? 「そう、真実。」 知りたい。ちょっと怖いけど。 「それが、あなたにとって、破滅的な答えだとしても?」 そんなに俺に都合の悪い答えなのか? 「………あら?あと40分位でこの夢が消えちゃうわよ。」 何だと!?長門は? 「ここ」 「僕もいますよ。」 「長門!!どういう事だ?」 「僕はスルーですか。」 「朝倉涼子から、あなたを助ける為、古泉一樹と来た。 だから、涼宮ハルヒを抑える役が居なくなっただけ。」 「キョン君。どういう事か解ったわね。」 「知らん。」 「とりあえず、あなただけは逃げて下さい。」 「掴まって。」 古泉、お前は? 「一人で戦います。」 大丈夫なのか? 「勿論、長門さんがあなたを送ってここに帰って来るまでです。 安心して下さい。それ位は持ちこたえますよ。 ここは涼宮さんの夢。閉鎖空間に似て非なる物です。」 「させない。」 一瞬で周りが宇宙空間の様に変わった。 「わたしの情報制御下に入ったわ。つまり、わたしを倒さないと、逃げれないよ。」 「…まずいですね。僕の力が出せません。」 「わたしがやる。あなたは彼を守って。」 「分かりました。」 俺は? 「黙ってて。」 冷徹な表情でそう言い捨て、長門は宙に浮いた。 朝倉も一緒に浮く。 「さぁ、始めましょう。」 朝倉が言い終わる前に、長門の手から、紫色の放射物が無数に出てきた。 朝倉も掌から青いビームのようなものが沢山出た。 2つは打ち消し合う。 同時に両者が接近し、肉弾戦を繰り広げる。 長門の手刀が朝倉の脇腹に入り、朝倉の裏拳が長門の顔面にヒットする。 怯んだ長門に、朝倉は容赦なく追い討ちをかけ、最後に腹部に決まった蹴りで、吹っ飛ぶ。 「長門!!」 「…………大丈夫。」 長門は何か唱え、朝倉の横の空間が歪む。 歪みの中から、コンクリートの塊みたいな物が、朝倉を殴打する。 「チッ」 また長門は何かを唱えた。 すると、空間が歪む。 気付くとそこは、見慣れた場所だった。 「ここは?」 駅前。 ただし、空は灰色だった。 「閉鎖空間に極力似せた空間を造った。これであなたの力も出せる。」 「感謝しますよ。長門さん。」 古泉は赤い玉を掌に浮かべた。 「いけますよ。いつもの倍の力が出せそうです。」 古泉は赤い玉に変わり、朝倉に近づいた。 「………危ない。」 古泉の周りが爆発した。 「ふぅ…間一髪でしたよ。」 古泉はバリアに包まれていた。多分、長門のおかげだろう。 「流石に2対1は辛いわね。少々本気を出そうかな。 緊急コード230………アクセス……涼宮ハルヒ………ダウンロード開始」 「今のうちに!!」 長門と古泉は突撃を仕掛ける。 大きな赤い玉と紫色の光線が朝倉を襲う。 朝倉は赤い玉を避け、紫色の光線を足蹴でかき消した。 赤い玉は急旋回し、再び朝倉を襲う。 「ダウンロード完了。」 瞬時に古泉が吹き飛ばされる。 「グッ!!」 何があった? 「………解りません。」 「わたしは涼宮さんのデータを盗ったのよ。」 じゃあ、お前は世界を改変することも出来たりするのか? 「そこまでは収集出来なかった。メモリ不足ってやつよ。だけど、あなた達に勝つ能力を身に付けたわ。」 何を言っている。お前は、ハルヒより強いだろ?あいつから学ぶ必要性はあるのか? 「勝負を決める要素は、スピード・感・経験の三つ。 だけど、わたしはこの三つが……特に、感と経験が不足してるの。 わたし達インターフェースは、元々戦闘目的で作られた訳ではなく、あくまで監視目的。 スピードはあるけども、戦闘の経験なんて、プログラミングされていないの。 だから、わたしは涼宮さんから感と経験、つまり瞬発的な情報判断能力を貰ったの。」 「明らかに朝倉涼子は強くなった。わたしだけでは彼女には勝てない。」 マジか!? 「長門さん。僕の能力を使って下さい。 神人狩りで涼宮さんの行動パターンは、大体掴めます。」 その手があったか。 「分かった。」 「へぇ、それは厄介ね。一応、抵抗しようかな?」 「40.17秒程かかる。それまで持ちこたえて。緊急コード801startrun………」 長門は、素早く呪文を唱える。 「分かりました。」 「10秒かからないで倒せるわね。」 「ハッタリは、よしていただきたいものですね。」 「ハッタリかどうか、直ぐに分かるわ。」 そう言った瞬間、朝倉は消えた。 「どこへッ!?」 「後ろよ。」 !!! 「次はあなたの番」 「はやく……に……げて……下……さい」 「計画の為、ここで死んでもらうわ。」 朝倉は地面に手をつける。 すると、コンクリートの地面は豆腐のように削り取られる。 朝倉が削り取った塊は、だんだんと形を変える。 「見覚えあるでしょ?」 アーミーナイフをちらつかせ、朝倉はニヤリと笑う。 忘れる訳がない。それで俺は幾度と殺されかけたからな。 「それは、良かったわ。でも、サヨナラね。」 朝倉は、ナイフを投げた。 「ひぃっ!!」 なんとマヌケな声だろうか。谷口に聞かれたら、バカにされる。 そういや谷口、今どうしてるかな? 実際、そんな事考える余裕なんぞなかった。 尻餅をつき、なんとかナイフをかわす。 しかし朝倉は、俺の頭上で、拳を振り落とそうとしている。 「死になs……!?」 朝倉が吹っ飛んだ。 「ハア……ハア…………まだだッ!!」 古泉!? 「まだ生きてたの?先に殺しましょうか。」 朝倉の手が、槍の様になる。 「やめろ!!!」 俺は、朝倉に殴りかかるが、 「邪魔よ。」 朝倉の蹴りで、俺は近くの木に叩きつけられる。 背中と胸が凄く痛い。なんて様だ。カッコ悪いな……俺。 「その腕、邪魔ね。」 朝倉の槍になった手が伸びる。 「あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ」 「あはっ♪」 俺の位置からはよく見えないが、多分朝倉は、古泉の肩に槍を突き刺した。 古泉の耳をつんざく悲痛な叫び声。 思わず、目を背ける。 呼吸が荒くなる。 脈拍も早い。 苦しい。 恐い。 「次は長門さんね。」 「遅くなった。ごめんなさい。」 「さぁ、早くわたしを倒さないと、彼が死ぬわよ?」 「知ってる。」 2人は、激突した。俺も目で追うのに精一杯だ。 「お久しぶりです。」 「え?」 えらく上品なお嬢様がそこにいた。 第五章へ